喫冬喫夏 20090710
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時のない世界は水没を、その実は望んでいたのかも知れない。

小さな中国のお針子 [DVD]小さな中国のお針子 [DVD]
(2003/11/07)
ジョウ・シュンチュン・コン

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「情熱の嵐」を観て、貸してくれた友人にリィウ・イエかわゆいかわゆいと
申しておったら、これもみなよ、とまた貸して戴いた次第ですが。
……可愛いとかそれ以前にすっごい映画だった。よすぎる。
ラストシーン咽び泣いたよ。何か一つの時代が終わったと云うより、
世界が終ったような気持ちになった。
文革時代の話なのだけれども、山奥の未開の地に、ちょっとずつ
文明が持ち込まれて、それが時計やなんかに象徴されている構図自体が
まあ先ずめちゃくちゃ好みなんですけど、それで何もかも変わってしまった、
みたいな話だとこんなに感動はせんと想う。
だって、変わり切ってしまう前に全てが水に沈んでしまうなんて云う事が、
そんな事が本当に起こって、純粋なその世界は変貌を遂げずに終焉を
迎えるんですよ。何てこった、と想った。
お針子の変貌は一つの象徴なのだろうけれども、何処かへ消えていって、
青年二人の青春時代自体も、まるで文革時代のようになかった事のように
なっていくと云うのが、何とも云えん。ほんまにいい映画。

リィウ・イエはやっぱりかわゆかったです。
何か全てが純粋過ぎて、都会の生活が気持ち悪くなります。
もうあたたかなおもいでなんてどこにもないのですよ。


( 2009.07.10 ) ( 映画 ) ( COMMENT:0 ) ( TRACKBACK:0 )
その心を撃つには、甘かったと云う訳だ。

一週間くらい前の話になるんですけれども……
映画館で「蟹工船」観てきました。
以下ネタばれしておりますよ。
SABU監督+松田龍平+西島秀俊と云うのにまんまと釣られて
映画館へ行った訳なんですけれどもね。

よかったです。ほんまに。
世相を反映しようと云う試みなのだろうけれども、
ちょっと前は家族もの、その前は純愛、今ならワーキングプア
と、邦画は簡単にそれをやろうとする傾向があると個人的には
想っていて、良くも悪くもあるとも考えている。
一時家族愛扱っとけば売れるだろ、みたいな映画がいっぱい
あって、ちいとがっくりきていたりしたのだけれども、その中で
「ゆれる」が群を抜いていたように、この「蟹工船」は一線を画すと
想います。
制作するに至った背景はよく存じ上げないのですが、多分労働が
今のような感じになっていなくても、この映画は受け入れられるべき
ではないかな、と想います。
取り敢えず、奴隷が如く働いて、頭を働かす暇もないような人々が
一つの知恵を獲得して、現状を変えてゆく、変えてゆこうとする姿勢が
押しつけがましくなく描かれていて、とてもよかった。
労働状況の改善の為に団結する、と云う発想自体がなかったけれども、
それを自らの意志、願えば必ずそうなる、と云う信念が元、立ち向かってゆく
労働者たちの姿が、一つ一つ歩みを進めてゆく姿が素晴らしい。
原始人が火を使い始めたような感動を覚えた。

とても劇的ではあるんだけれども、劇的であるが故に失われる
リアリズムにも気を傾けている演出だとも想った。
龍平演じる新庄が、労働者の立場や希望を語るシーンで、
普通なら全部すっきり語らせて、ヒーローを作りだす所なんだろうけれど、
全部語る前にあっさり撃ち殺される訳です。それが、観客としては哀しい
事この上ないのだけれど、構成としては凄い効果的だと同時に感動した。
そこで語らせてくれるなら、初めから蟹工船はもっとゆっくり走っていた
だろうから。
権力に踏みにじられても僕等は、と云う気迫がそこで倍加する。
リーダーなんか決めなきゃよかったんだ、って云う台詞があるんですが、
これは裏返しの意味をとても持っている。誰だってヒーローになれる、
リーダーになれるのだ、と強いメッセージのある言葉だと想った。

美術的にもとても好き。汚いのにかっこいい衣装、必要以上に重い機械と
歯車達。少しすえた碧味のある画面。プチ労働組合のマークもかっこいい。
鉢巻するみんながとてもかっこいい。
西島君演じる監督も、変な血のついた、汚れているけれども白いスーツとか、
顔の傷とかもぐっとくる感じ。

音楽に関して、エンディングがNICO Touches The Wallsだとはつゆ知らず
だったんですが、……いい曲だった。8月発売のシングルに収録される
ようですね、「風人」。かっこいいです。内容とも微妙にリンクしつつ、
現代にも向いているところがまた。

俳優の方々。龍平の、やっぱり何か裏があるだろう、過去があるだろうと
感じさせる空気は半端ないですね。贔屓目を差し引いても、やっぱり画面の
上で、「こいつ一物持ってるな」って云う感じがある。且つ、彼の演じる
田舎者はとても可愛い。
西島君ももうたまらん。ドSかあなた。彼の背景をもっと描いて欲しかった
けれども、何か彼も哀しみを背負ってそうな輪郭をしてるので、気にかかる。
あとびっくりしたのがTKOの二人。演技うまいとかじゃなくて、リアル労働者と
云うか、最近芸人さんを使うと云うと、どうしても話題作りな気がしてしまう
もんですが、これはいい起用だった。今でこそ彼等はブレイクしてますが、
ずっと大阪にいた頃もちぃと存じているので、その下積みの感じがぐっと
出ていた。厭な感じが全くしない。前半部分の暗い顔がほんまに素晴らしい。

ねたばれしまくっといてあれですが……
気になっている人はスクリーンで観るべしです。


( 2009.07.10 ) ( 映画 ) ( COMMENT:0 ) ( TRACKBACK:0 )